「女教皇」THE HIGH PRIESTESS ゾンビタロットアドヴェントカレンダー
今日は「女教皇」のカードです。
これは非常にミステリアスな、謎の多いカードです。
このカード自身が謎や秘密の真理を意味しているとも言えるでしょう。
満月の夜、ヴードゥー教の女司祭が巨大な頭蓋骨の上で儀式を行なっており、炎の中には骨、その周りに蝋燭や小瓶。背後には原子力発電所の影。原始的な呪術の儀式と、現代科学が同居しています。
そもそもゾンビはヴードゥー教の魔術によって、奴隷にされるため蘇らされた死体のことです。
「噛み付かれたら感染する」という設定は後になってジョージ・A・ロメロ監督により作られたもの。
「自我がなく主人の命令を聞く死体」が元々のゾンビです。
ゾンビタロットのゾンビはロメロ的な「感染系」ゾンビと捉えてよいと思います。
ただゾンビタロットにも、特にハザードのカードで「使用人として労働させられるゾンビ」が登場します。
魔術師が科学的に解明したゾンビの仕組みを受け、ハザードのカードがゾンビ使用人の実用化に取り組んでいきます。
そこには実験と観察、法則と因果関係の追求がありました。
女教皇はもっと呪術的、直観的、夢や霊的な方法を使います。
論理や理屈を飛びこえて、直接回答にアクセスする力を持っているのです。
大きな髪飾りは絵の枠から上にはみだしています。
これは現世的なものでない、宇宙的、霊的なエネルギーの世界へ、女教皇の頭がめり込んでいることを意味します。
この派手な髪飾りは天からのエネルギーやメッセージをキャッチする役割があるようです。
また、このカードの絵は左右対称で、しっかりした縦軸を持つ、ブレにくい性質があります。
と同時に、その縦ラインの上には「くねる蛇」「ひねられた腰」「揺らめく炎」の絵も描かれています。
主軸にまとわりつく「揺らぎ」があるのです。
これらクネクネしたものの存在によって、主軸が柔軟に守られていたり、また、その正体が直接確かめられない秘められたものになっています。
特に蛇は、女教皇の乳房が見えそうで見えない、という絶妙な位置におり、その神秘性を高めています。
このカードは、女性の謎をあらわしてもいます。
「男性から見て、うまく話が通じない女性」や「謎の女」などの存在を意味することも。
神秘的すぎて恐怖の対象になっている、というケースもあるでしょう。
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──何をやっているのですか?
「お前を待っているのだ。月と太陽を引き合わせる仕事のように。蛇が月を飲み込み私は太陽を生む。しかし私はこの父の頭蓋骨の上に座りつづける。何年も何年も待っているのだ。月に住む力が私の乳房に宿り、それに蛇がまとわりつく。私が子を孕むのは太陽と火の力で、お前はその供物なのだ」
──その火が太陽ですか?
「真の太陽はもはや存在しない。この火はその代用品であり、私の住む神殿(原子力発電所)が新たな太陽でもある。その見えない火が世界に行き渡る。それが生け贄を捧げるという事だ。蝋燭や瓶は各地の使者から届けられたもので、使者の骨を火に投げ入れる事で私は未来を見る」
「大地から私の父が生まれた。この蛇は月の周りを這い回っていた私の母だ。お前は何を望むのか、骨と引き換えに?」
(頭蓋骨の両目から何かが飛び出す)
彼女を笑わせることはできない。神秘の生活をしすぎているのだ。しかしこの頭蓋骨は土の中で笑っているのかもしれない。彼女のかわりに笑うのである。
「月の様に見えるのは実は太陽なのだ。それほどまでに空は曇っている。お前の望みが何かを言え」
しかし彼女はそれを叶えるために質問しているのではない。君自身の中にある正解を見つけさせるために聞いているのだ。何でも知っているが何も答えない女。しかしその答えは火を見るより明らかだろう?